失った声と臭いを取り戻す!?食道発声法ってどんなもの?

『モーニング娘』や松浦亜弥さんのプロデューサーで、『シャ乱Q』というバンドのボーカルでもあるつんく♂さん。

 

つんく♂さんが喉頭がんを患い、声帯を摘出するという選択をしたのは2014年10月のこと。

翌年4月の出身大学入学式のプロデュースで、スカーフを巻いて一声も発しない姿に衝撃を受けたのは、私だけではないはずです。

あれほど魅力的だった声を、華やかなステージを捨て、生きることを選んだつんく♂さんの決断に震えるほどの感動を覚えました。

 

そのつんく♂さん、ずいぶん以前から「食道発声法」によって声を取り戻したいと話されていたように記憶しています。そして努力が実を結び、静かな場所でなら会話ができるまでになっているとか。

 

この「食道発声法」、いったいどんなものなのかを調べてみました。

声帯を摘出=「永久気管孔」が必要らしい

治療法は様々あるようですが、声帯を摘出するという選択をした場合、呼吸のために『永久気管孔』という穴が必要になります。

この『永久気管孔』があれば、呼吸をすることも食事を摂ることもできるけれど、声帯がないわけですから声が出ず、また臭いなどを感じるのが難しくなるそう。

 

そもそも、食べ物は食道、空気は気管と、それぞれ役割の違う二つの通り道があったノドの内側。“声”というのは空気の振動ですから、気管の上部にある声帯を通って声となって話ができているわけです。

その声帯を取ってしまうと必要になる『永久気管孔』。

肺から出ている気管は、その出口をそれまでの鼻や口ではなく喉に開けられた『永久気管孔』とします。そのため、鼻を出入りする空気がなくなって“臭い”を感じられなくなるのだと思われます。

 

『永久気管孔』は首に穴が開いたままになっているため、空気中のごみや乾燥の影響を受けやすいと言います。それを防ぐために、“エプロン”といわれるカバーをつけるそう。その“エプロン”を隠すために、写真の女性のようにスカーフを着用している人が多いようです(写真はイメージです)。

声帯を使わずに声を出す「食道発声法」って?

声が出ないために、PCやスマホ、紙とペンなどいわゆる筆談で意思の疎通を図ることが多い声帯摘出者。

つんく♂さんも、手術前と同じように音楽プロデューサーとして活動しておられますね。ですが筆談中心ではやはり細かなニュアンスを伝えるのに手間取ったりそれまでとは会話のテンポが違ったりと、不便なことも多いようです。

 

声帯を使わず、食道入口付近の粘膜を振動させることによって声を出すという方法が「食道発声法」。

肺から気管を通って出てくる空気ではなく、鼻や口から吸って食道にいったん溜め、それを逆流させて声を発するという『食道発声法』。いわばゲップのような状態を作り出して声を出すのだそうです。相当な練習が必要なようで、習得できるのはわずか4割程度だというデータも。

 

とはいえ、食道発声法をマスターすれば鼻の機能が使えるようになるので嗅覚が戻り、臭いを感じられるようにもなるといいます。

嗅覚は五感の中でいちばん本能に近い

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美味しいコーヒーを飲もうというとき、もしも香りが感じられなければ?

私は根っからのコーヒー党ですが、何よりその香りがたまらなく好きなのです。香織のないコーヒーは、もう別物だと思ってしまうくらい。

 

このように、“臭い”を感じられないと食事のおいしさが半減します。

またガスの臭いや食物の腐敗臭などは、感知できなければ命に関わることも。

 

香水の香りで昔の恋人のことを思い出す、なんてのは、嗅覚が五感の中でいちばん本能に近いと言われるゆえんですね。

 

アロマテラピーなどの芳香療法も一定の効果があると認められています。

 

「食道発声法」を習得することによって嗅覚が戻り、臭いを感じられるようになるというのは命を守ることにも、そして生活そのものを豊かにすることにもつながるのではないでしょうか。

 

きっとつんく♂さんも、ご家族とのコミュニケーションがとりやすくなり、お子さんたちと笑顔で語り合う場面が増えるのではないかな、と勝手に想像してしまいました。

まとめ

  • 声帯を摘出し呼吸のための『永久気管孔』になると、声が出ず臭いを感じにくい。
  • 声帯を使わない『食道発声法』。習得は難しいが、マスターすれば嗅覚も戻る。
  • 嗅覚は本能にいちばん近いもの。命を守り、暮らしを豊かにする。

 

声帯を摘出すると臭いを感じられなくなる。

実は今回調べるまで、まったく知りませんでした。

声が出ない、喉に空気孔(永久気管孔)がある。そのことは知っていたけれど、それ以外の不便は想像もしていなかったんですね。

 

声が出る。話ができる。コーヒーの香りもトイレの臭いも腐敗臭も感じられる。

今まで当たり前だと思っていたことが、実は生活を豊かにしてくれていたのだな・・・

そのありがたみを感じられたことが、今回のいちばんの収穫だったような気がします。

 

食道発声法をマスターすると、訓練次第で歌を歌うことも可能になるそうです。

もういちどつんく♂さんの歌声が聞ける日も来るのかしら?